空を見ると視力がよくなるって本当?─仮性近視と視力回復のメカニズム─
朝夕に秋の気配を感じるようになりました。季節の変わり目、皆さまいかがお過ごしでしょうか。読書とワインをこよなく愛する「謎のブロガーM」です。
この季節、涼しい風に誘われて読書に没頭する時間が、つい長くなってしまう——そんな方も多いのではないでしょうか(私もそのひとりです)。
読書に限らず、パソコンやスマートフォンの使用時間が長くなる現代においては、目の疲れや視力の低下を感じている方も少なくありません。
そんな中、最近「空を見ると目がよくなる」という話を耳にしたことはありませんか?
実はこれ、まったくの迷信というわけではなく、科学的な根拠に基づいた理論も存在するんです。
とくに「仮性近視」や「眼軸長の調節機構」との関係が注目されており、近年では屋外活動と近視進行の抑制との関係について、多数の研究報告がなされています。
今回は、近視の種類とその成り立ち、そして視力を守るために日常生活でできる工夫について、皆さまにわかりやすくご紹介いたします。
近視には2つのタイプがある
近視には主に「仮性近視(偽近視)」と「軸性近視(真の近視)」の2つのタイプがあります。
仮性近視とは、目の中の「毛様体筋」というピント調節の筋肉が、スマートフォンや読書などで近くを長時間見続けることによって緊張し、一時的に近視のような状態になることを指します。この状態では、目をしっかり休めたり、遠くを眺めたりすることで、視力が回復することがあります。
一方、軸性近視は眼球が前後に伸びることで生じる構造的な変化で、進行すると視力は自然には戻りません。
空を見ると本当に目にいいの?
仮性近視の状態では、遠くを見ることが非常に効果的です。中でも、空のように「はるか遠く」にあるものを眺めることで、毛様体筋の緊張がゆるみ、目のピント調節機能が回復しやすくなります。
ここでポイントとなるのが、「ただ漠然と空を眺めるのではなく、特定の目標物、“視標(しひょう)”を定めて意識すること」です。
たとえば、空に浮かぶ雲の形、飛行機、星、遠くの山の頂など、明確な目標物を“見る”という意識で視線を向けることが、調節機能の回復につながります。特にパイロットの視力に関する研究では、遠くを意識的に見る行動が視力の維持に寄与しているという示唆もあります。
実際に、視力が0.3だった人が、眼鏡を外して毎日数分間空の雲や星を裸眼で眺めるようにしたところ、1.0まで回復した例もあります。
屋外活動と近視予防の関係
子どもにおいては特に、屋外で過ごす時間が近視の進行を抑えることが分かってきています。複数の大規模な疫学研究(台湾、中国、オーストラリアなど)により、日常的に2時間以上屋外で過ごすことが近視の発症リスクや進行リスクを有意に低下させることが明らかになっています。
台湾では、週150分の屋外活動を学校教育に取り入れたことで、小学生の近視の割合が減少したという報告もあります。
その効果は、以下のような複合的な要因によると考えられています:
- 遠くを見ることで毛様体筋の緊張を緩める
- 太陽光(自然光)に含まれる光刺激が眼軸の伸長を抑える
- 屋内に比べて近距離作業が減る
このように、屋外活動による近視抑制効果は、エビデンスの蓄積が豊富で信頼性が高いといえるでしょう。
大人にも有効な視力ケア習慣
もちろん、大人になってからでも目のケアは大切です。以下のような習慣を日常に取り入れてみましょう。
- 眼鏡やコンタクトレンズを外して、空や遠くの建物、山などを5〜10分裸眼で眺めてみる
- 特定の雲や星などを「意識的に見る」ことを心がける
- 屋外での散歩や運動を日課にする
- スマートフォンやパソコン作業の合間に、遠くを眺めて目を休める(20-20-20ルール:20分ごとに20秒間、20フィート[約6メートル]先を見る)
まとめ:視力回復の第一歩は「見る習慣」を見直すこと
目の健康を守るためには、ただ治療に頼るだけでなく、日常生活での「目の使い方」を見直すことが大切です。仮性近視であれば、空や遠くの視標を見る習慣を取り入れることで、視力の改善も十分に期待できます。
軸性近視であっても、遠くを見ることは目の負担を軽減し、進行を抑える助けになります。特に小さなお子様をお持ちのご家庭では、日常的に屋外で過ごす時間を大切にしてあげてください。
当院では、視力のご相談や近視予防に関するアドバイスも行っております。お気軽にご相談ください。
次回も目の健康に役立つ情報をお届けします!
