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「白い瞳」は警告のサインだった―― 白色瞳孔から始まった網膜芽細胞腫の診断 ――

先日、毎年恒例の「横浜市大栄光会(横浜市大医学部栄光学園同窓会)」に参加してきました。謎のブロガーMです。

この会には毎年、栄光学園から校長先生をはじめ先生方にもご参加いただいており、今年も3名の先生をお迎えしました。現在の校長先生は私の同級生ということもあり、昔の栄光学園の話で大いに盛り上がりました。

私たちが学んだ頃の栄光学園は、ドイツ人のグスタフ・フォス校長のもと、多くの神父さんが教員として教鞭を執っていました。黒の襟詰めの神父服を着た神父さんたちが校内を普通に歩いている――そんな光景が、当時は当たり前のものでした。今思えば、あのような学校は日本でも珍しかったのではないでしょうか。

特にミサの時には、真っ白な祭服に身を包んだ神父さんたちが一堂に会し、厳かで独特な空気に包まれていたことを、今でもよく覚えています。

現在では神父さんの数もずいぶん少なくなったとのことですが、時代が変わっても、栄光学園は私たちにとって大切な母校です。今回も、懐かしい思い出話に花を咲かせながら、母校とのつながりをあらためて感じるひとときとなりました。

Men for Others, with Others

――他者のために、他者とともに。

栄光学園で教えられたこの精神は、卒業して何十年経った今でも、私たちの心に残っています。

さて、ここからは本題の症例について触れたいと思います。

「写真を撮ると、片方の目だけ白く光るんです」

受診のきっかけは、ご家族の何気ない気づきでした。

患者さんは、1歳半の乳幼児でした。

フラッシュ撮影をすると、片方の瞳だけが白く光って写ることがある――。

さらにご家族は、

「最近、目が少し違う方向を向いている気がする」

とも感じていました。

こうした違和感が重なり、眼科受診に至りました。

本来、フラッシュを使って写真を撮ると、瞳は赤く写ることがあります。いわゆる「赤目」です。これは、眼の奥に入った光が眼底で反射して戻ってくるために起こります。

ところが、この症例では、赤くなるはずの瞳が白く写っていました。

これは白色瞳孔(はくしょくどうこう)と呼ばれる所見です(写真)。

日常生活では見逃されやすい変化ですが、眼科医にとっては、決して軽視してはならない重要なサインのひとつです。

外来で診察した時点では、強い充血や痛みはなく、一見すると大きな異常はなさそうに見えました。

しかし、よく見ると瞳孔の奥にわずかな白っぽさがありました。

さらに眼底を詳しく観察すると、網膜の奥に、明らかに正常とは異なる所見が確認されました。

網膜芽細胞腫にみられた白色瞳孔
網膜芽細胞腫では、腫瘍からの光の反射により、フラッシュ撮影で瞳が白く写ることがあります。本症例では、腫瘍と正常網膜が混在しており、一部に網膜血管の走行も確認されます。

この時点で、「単なる反射や見間違いではない」という確信に変わりました。

この症例では、斜視も認められました。

乳幼児の斜視は、成長の過程で一時的にみられることもあり、必ずしもすべてが病的とは限りません。

しかし、何らかの眼の病気によって片眼の視力が十分に育たない場合、脳は「見えにくい方の目」からの情報を使わなくなります。

その結果、その目が内側に寄る内斜視として現れることが多くなります。
ときに外側を向く外斜視となることもあります。

斜視は、見た目の問題だけではありません。

「その眼の奥で、何かが起きている」可能性を示す、重要なサインでもあります。

精密検査を進めた結果、診断は網膜芽細胞腫でした。

網膜芽細胞腫は、小児に発症する眼内の悪性腫瘍です。
網膜の細胞が、本来は増殖を終える時期を過ぎても増え続けてしまうことで発生します。

本来、網膜の細胞は出生前後に増殖を終え、それ以上は増えません。
しかし一部の乳幼児では、この増殖を止める仕組みがうまく働かず、未熟な細胞が腫瘍として増殖してしまうことがあります。

網膜芽細胞腫では、網膜の奥に白っぽい腫瘍が形成されます。

フラッシュの光がその腫瘍に当たると、血管ではなく腫瘍が反射源となり、
赤ではなく白く光って写ります。

腫瘍が眼底全体を占めていない場合には、正常な網膜が一部残っているため、白色瞳孔の中に網膜血管が部分的に見えることもあります。

この病気は、発見が遅れると、視力だけでなく命に関わることがあります。

一方で、早期に見つかれば、治療の選択肢は大きく広がります。

視力を守れる可能性。
眼を温存できる可能性。
そして、命を守れる可能性。

それらはすべて、発見のタイミングによって大きく左右されます。

白色瞳孔は、必ずしも重篤な病気だけを意味するわけではありません。
先天白内障など、命に直結しない原因で起こることもあります。

しかし、網膜芽細胞腫のように、早期発見がその後の人生を大きく左右する病気が隠れていることもあります。

白色瞳孔や、片眼だけの変化、斜視に気づいた時点で、
「様子を見てよい」と判断できる根拠は何もありません。

一度は、眼科で検査を受けることが大切です。

それだけで、守れる視力があります。
そして、守れる命があります。

 
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