結膜炎と診断され治らなかった「かすみ目」―実質型角膜ヘルペスの初期症例
こんにちは。
今回は、結膜炎と診断され治療を受けていたものの症状が改善せず、当院を受診され実質型角膜ヘルペス(herpetic stromal keratitis)と診断された一例をご紹介します。
■ 「結膜炎」と診断されたが、症状は改善せず
患者さんは最初、近隣の眼科で「結膜炎」と診断され、抗菌薬点眼とステロイド点眼で治療を受けていました。
しかし症状は思うように改善せず、かすみが強くなり視力まで低下してきたため、不安になって当院を受診されました。
■ 実質型角膜ヘルペスとは?
ヘルペスウイルスが角膜実質に感染・炎症を起こす病態で、以下の特徴があります。
- 角膜上皮病変(傷)は伴わない
- 視界のかすみ(混濁による)
- 充血や前房炎症は軽度~中等度
- 痛みや異物感は軽いことも多い
- 角膜知覚低下を伴うことが多い
■ 診察と診断の落とし穴
当院では、非常勤で診療している大学病院の眼科専門医が診察しました。
スリットランプ検査では、
- 角膜上皮は滑らかで傷害なし(上皮病変なし)
- 角膜実質に限局的で円形に近い淡い混濁
- 前房内に軽度のフレアと炎症細胞(Grade 1+)
- 角膜知覚やや低下
このように上皮病変がない場合、ドライアイや非感染性角膜炎と診断されることもあります。
しかし、実際にはヘルペスウイルスに対する免疫反応が原因の実質型角膜ヘルペスであることも多く、診断に迷いやすい病態です。
診断の鍵は、角膜実質の淡い混濁、軽度の前房炎症、そしてわずかな角膜知覚低下など、至る所に隠れていました。

角膜上皮は平滑で傷は認められず、実質に限局した混濁を確認。前房には軽度の炎症細胞も出現していた。
■ 治療のポイント ~ステロイド単独使用の危険~
当院受診時には症状が進行していましたが、所見と経過から即座に実質型角膜ヘルペスを疑い、
- ゾビラックス眼軟膏(アシクロビル眼軟膏)
- リンデロン点眼(ステロイド点眼)
を併用して治療を開始しました。
その結果、速やかに症状は改善し、視力も回復傾向となりました。
【注意】
実質型角膜ヘルペスでは、抗ウイルス薬(アシクロビル眼軟膏)を使用せずにステロイド点眼を使用すると、ウイルス増殖を助長し病態が悪化する危険があります。
本症例でも、抗菌薬とステロイド点眼の併用のみで、抗ウイルス薬が使用されていなかったため、実質型角膜ヘルペスが進行したと考えられます。
■ おわりに
「なんとなくかすむ」「少し違和感がある」――
一見軽い症状の背後に、角膜の深層で進行する病変が潜んでいることもあります。
当院では、患者さんの訴えに丁寧に耳を傾け、慎重な診察と治療で診断を進めています。
目の不調が気になるときは、どうぞお気軽にご相談ください。
※本記事は、特定の個人を識別する情報を含まないよう十分に配慮された内容であり、医療啓発を目的として作成されています。記載された情報は、筆者の臨床経験に基づいた一般的説明であり、すべての症例に当てはまるものではありません。
