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ぶどう膜炎続発緑内障にもSLTが有効 ― 炎症を見極めたうえでの新たな治療選択肢

Efficacy and safety of selective laser trabeculoplasty for uveitic glaucoma
Scientific Reports, 2025 Feb 3;15:4077, doi:10.1038/s41598-025-88354-0)

Springer Nature社の国際誌に横浜市立大学からの報告

2025年2月、横浜市立大学からの研究成果が、Springer Nature社発行の国際学術誌 Scientific Reports に掲載されました。
この報告では、ぶどう膜炎続発緑内障(uveitic glaucoma)に対する選択的レーザー線維柱帯形成術(Selective Laser Trabeculoplasty:SLT)の有効性と安全性が検討されています。

SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)とは?

● 何をする治療?
黒目の端にある「線維柱帯」に、選択的に反応する特殊なレーザーをごく弱いエネルギーで照射し、
房水の流れを良くして眼圧を下げる外来治療です。

● 特徴

  • 切らない・縫わない低侵襲治療(点眼麻酔で数分程度)
  • 眼の排水口にあたる部分(隅角)がしっかり開いているタイプの緑内障が対象
  • 必要に応じて再施行が検討できる

● 期待できる効果
点眼薬の本数を減らせたり、同じ治療内容でも眼圧が下がりやすくなる場合があります(個人差あり)。

SLT治療のシェーマ

一般的には「適応外」とされるSLT

SLTは原発開放隅角緑内障(POAG)や高眼圧症に対して広く行われていますが、
ぶどう膜炎続発緑内障に対しては一般的に適応外(慎重適応・禁忌相当)とされています。

理由は、レーザー刺激により炎症が再燃するリスクがあるためです。
そのため、これまでこの領域におけるSLTの報告は限られていました。

結果:通常の開放隅角緑内障よりも大きな眼圧下降効果

横浜市大の報告では、薬物治療で眼圧コントロールが困難だった13例17眼を対象に、
SLT施行後6か月間の経過を解析しています。

  • 平均眼圧:28.4 ± 6.5 mmHg → 17.3 ± 9.4 mmHg(6か月後)
     → 約11 mmHgの有意な低下(P < 0.0001)
  • 炎症悪化やステロイド増量例はなし
  • 成功率:6か月で64.7%

興味深いのは、通常の開放隅角緑内障に対するSLTよりも大きな眼圧下降効果が得られた点です。
POAGでは3〜5 mmHg程度の下降が一般的ですが、本研究では平均約11 mmHgの低下を示しました。
これは、ぶどう膜炎に伴う線維柱帯の色素沈着や組織変化が、レーザー刺激に対してより反応しやすい可能性を示唆しています。

炎症を見極め、鎮静期に施行することが鍵

活動期に施行すると炎症再燃を招く危険がありますが、
炎症が鎮静化していることを厳密に確認したうえで行えば、
眼圧を下げても炎症を悪化させないことが示されました。

誰にでも行える治療ではありませんが、
炎症の状態を丁寧に見極め、適切な時期に施行すれば、
かなり良好な結果が得られることが示されています。

当クリニックでの体制

当クリニックでは、横浜市立大学の緑内障専門医に加え、ぶどう膜炎専門医も非常勤で勤務しており、
通常の緑内障に対するSLT治療に加えて、
ぶどう膜炎に続発した緑内障に対しても、炎症の状態を十分に評価したうえで
安全に治療を行う体制を整えています。

治療の適応や時期については、主治医と相談しながら慎重に判断いたします。
患者さん一人ひとりの病状に応じて、最も適した方法をご提案いたします。

お気軽にご相談ください。

 
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